「それは、私の仕事に対する嫌味?」
少し気を悪くしながら広沢くんの前でトンっとテーブルに手をつくと、彼が私を見上げて悪戯っぽく笑った。
「いや、そうじゃなくて。職場でのれーこさんの顔はいつも真面目で厳しくて、一晩中俺の腕の中にいた女とはまるで別人だなーって」
「なっ……」
「昨日の夜は、あんなにエロくて可愛かったのに」
相変わらず恥ずかしげのない広沢くんの言葉に、私のほうが絶句して赤くなる。
昨日の夜、残業後に広沢くんは私の家に来た。
何か簡単に食べるものを作るつもりだったけれど、部屋に入った彼は少しも待ってくれなくて。
8つも年下の彼に完全に翻弄された末に、カーテンの隙間から差し込む朝の光に誘われて、とてもひさしぶりに男の人の腕の中で彼よりもあとに目を覚ました。
「顔、真っ赤。可愛い、れーこさん」
広沢くんがククっと声をたてて笑いながら、私の頬に手を伸ばす。



