「では、これでミーティングを終わります」

そう締めくくって腕時計に視線を落とすと、既に就業時間を10分ほど超えていた。


「少し長引いてしまったわね。このまま各自解散で。お疲れ様でした」

「お疲れ様です」

私の声かけを合図に、ミーティングに集まっていた同僚たちがバラバラと立ち上がり始めた。

それぞれおもむろに会議室をあとにする彼らに背を向けて、私はミーティングに使用したプロジェクターをひとり黙々と片付ける。

短い時間でそれを終わらせて振り返ると、会議室の席に広沢くんだけがひとり残っていた。

もう誰もいないと思っていたから、思わず肩をビクつかせてしまう。


「な、何してるの?」

必要以上に驚いた私を見て、広沢くんがクスリと笑った。


「いや。相変わらず、れーこさんの仕切るミーティングは無駄がなくてわかりやすいなーって感心してたんです」

約束したとおりに職場ではきちんと私に対して部下としての対応を示してくれる広沢くんだったけれど。

誰もいないところでは、私に対する物言いが生意気になったような気がする。