「鍵は渡したんだから、先に帰って待ってなさい。仕事の邪魔なんだけど」
作業途中の資料からチラッと視線をあげると、広沢くんが唇の端をスッと引き上げた。
「鍵もらえたのはすげー嬉しいんですけど。れーこさんのいない家で待ってるのも淋しいじゃないですか。どうせ同じ家に帰るなら、ここでれーこさんのこと見ながら、いろいろ想像して待ってます」
「いろいろ?」
怪訝に眉を寄せると、私を見つめる広沢くんの瞳が蠱惑的に揺れる。
「れーこさんのこと、どんなふうに啼かせようかなーって」
広沢くんが恥ずかしげもなくそう言ってにこりと笑うから、私のほうが過剰反応して真っ赤になってしまった。
「私はそんなつもりで鍵を渡したわけじゃ……」
「じゃぁ、どんなつもりだったんですか?」
私を見つめたまま、広沢くんがデスクに両手をついて立ち上がる。
「それは……」
言い訳を口にしようとしていると、身を乗り出してきた広沢くんがそっと私の唇を塞いだ。



