その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―






「あれ?鍵かかってる」

私を現実に引き戻したのは、会議室のドアをこじ開けようとする音とその向こうから聞こえてきた数人の知らない声だった。


「予約した時間間違えたんじゃないか?」

「いや、確かにこの時間に使えるように予約しといたんだけど」

同じ会社の他の部署の人か、ビルに入っている他の会社の社員が会議のためにやってきたらしい。


今まで会議室でしていた自分の行為が後ろめたい。

急いで広沢くんから離れようとすると、彼が私を抱き寄せて「しーっ」と唇に指をあてながら悪戯っぽく笑った。


「とりあえず、ビルの事務所に鍵もらいに行こう」

「じゃぁ、俺は戻って、会議の時間を少し遅らせるって他の人に伝えてくる」

広沢くんの腕の中でドキドキしながら息を潜めていると、そんな会話とともに足音が遠ざかっていく。


ドアの向こうの人の気配が完全に消えてからようやくほっと息をつくと、広沢くんが私を腕に閉じ込めたままけらけらと笑い出した。