その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「バカなこと言わないで。そんなはずないでしょ」

確かに今日は仕事に集中できていなかったけど、だからと言ってそこまで感情を隠せないほど弱くない。

背けていた顔をしっかりと広沢くんのほうに向けたら、彼が切なげな瞳で私を見下ろしてきた。

彼が言葉や表情に流されてはいけない。

強くそう思いながら、背筋を伸ばして睨むように広沢くんと視線を合わせる。

しばらくお互いに無言で見つめ合ったあと、広沢くんが私の左頬に手を伸ばしながら口を開いた。


「好きです」

絞り出したような広沢くんの掠れた声に、胸がドキリと高鳴って、彼の指先が触れた頬の熱が少し上昇する。

こんなに強情に広沢くんからの好意を拒絶する態度をとり続けているのに、それでもまだ秦野さんではなくて私を選んでくれるのかと思うと本当はものすごく心が揺れていた。

でも、広沢くんに本心を読み取られないように、奥歯を噛み締めて動揺を隠す。