「北原さんの本社への誘いを断っちゃうくらい、碓氷さんが気になる人って誰ですか?」
ふたりきりの会議室に切なく響いた広沢くんの声に、ドキリとした。
「そんなこと、仕事中にする話じゃないでしょ。いいから、早く離してくれない?」
わざと冷たい声で一蹴してみたけれど、広沢くんは私を閉じ込めた腕を解こうとはしなかった。
「嫌です。教えてくれないと離しません」
その言葉に胸がぎゅっと縮こまるのを感じながら、私は小さくため息を吐いた。
「わかった。じゃぁ、教える」
そう答えてから、少し考える。
今ここでこう言えば、広沢くんの私への好意は消えるだろうか。
「知り合いに紹介されている人がいるの」
その一言で、広沢くんの表情が変わるのが見ていなくても背中越しに伝わってきた。
同時に、私を固く閉じ込めていた彼の腕の拘束が緩む。



