「それなら、座って話を聞くから。まずは手を離してくれる?」
振り向いたまま広沢くんにつかまれた手に視線を落とすと、彼も同じようにそこに視線を落とした。
「嫌だって言ったらどうしますか?」
視線を上げた広沢くんが、私の腕をぎゅっと強く握る。
「何言って……」
怪訝に眉を寄せたとき、広沢くんが不意に背中から私を抱きしめた。
耳の後ろに温かい彼の吐息を感じて、たっぷり数十秒は硬直してしまう。
けれど、会議室の白いドアに薄っすらと反射して映って見えた自分の影にハッとした。
「離して。ミーティングに参加する他の人たちが来たらどうするのよ」
冷静な声で言って広沢くんを退けようとすると、彼が私に回した腕を狭めてクスリと笑った。
「来ませんよ」
「え?」
「参加者は俺と碓氷さんだけですから」
広沢くんの言葉に耳を疑う。



