その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「そうですね。じゃぁ、ミーティングのテーマは『碓氷さんが気になってる相手は誰か』にしましょう」

「何言ってるのよ。本当の議題は何?」

「だから言ったじゃないですか。『碓氷さんが気になってる相手は誰か』だって」

眉間を寄せる私に、広沢くんは意地悪く笑いかけてくる。


「ふざけないで。本当は事前の打ち合わせなんて必要ないんでしょう?ふざけて遊んでるだけなら、私は仕事に戻るから」

声を荒げそうになるのを堪えて、なるべく冷静な態度で広沢くんにそう告げる。


「ダメですよ。このミーティングには碓氷さんにも参加してもらわなきゃいけないんで」

会議室を出ようと、広沢くんが手首をつかんで私を引き止めた。


「スケジュールにはなかったはずだけど」

「そうですね。たった今、俺が緊急で決めたので」

不満顔で振り向く私に、広沢くんが微笑んだ。


「それなら余計に、無駄な話をしている場合じゃないじゃない」

「そうですね」