その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「碓氷さんは待ってください。ミーティングの前に、打ち合わせしときたいことがあるので」

「え?」

ドアのところですれ違うときに、広沢くんが私を呼び止める。

今日はさっきの役職者会議以外にミーティングはなかったはずだけど。

私が会議に出ている間に、ミーティングが必要な緊急事態でも起きたのだろうか。


「碓氷さん、時間ないんでお願いします」

きょとんとしていると、広沢くんが怒ったような声で私を呼んだ。


「あ、ごめんなさい。じゃぁ、北原さん。私はここで……」


会議室の外で私を待っていた北原さんに会釈をする。


「あぁ、お疲れ様。また出張で来たときに」

「お疲れ様です」

もう一度小さく頭を下げると、何故か北原さんは私を名残惜しそうに数秒見つめてから去って行った。


「碓氷さん、まだですか?」

北原さんの背中を見送っていると、広沢くんが珍しく苛立った声で呼びかけてくる。

たいして待たせているわけでもないのに。

そんなに急ぎの案件なんだろうか。

疑問に思いながら振り返ると、広沢くんが私を会議室の中に入れてドアをピシャッと閉めた。