まさか、北原さんにそんなことを言われるとは思わなくて驚いた。
「副社長のお嬢さんとの結婚の話は……?」
「来年には……という話もある。彼女と俺の気持ち次第だけど……」
「だったらどうして、今さら私に?」
「それは……」
北原さんが言葉を濁す。
どういう事情があるのかはわからないけれど、北原さんの反応を見る限りでは、彼と副社長のお嬢さんとの結婚の話はうまく進んでいないんだろう。
たぶん北原さんは私を本気で本社に連れて行きたいのではない。
私を使って副社長のお嬢さんとの結婚を破談に持っていきたいんじゃないかと思う。
昨日の懇親会のときに、私の結婚の予定をさりげなく確認しようとしたのはこのためだったのかもしれない。
あんなふうに私のことを切り捨てておいて、未だに私が北原さんに未練を残しているとでも思ったんだろうか。
年齢のことを考えたら、復縁を匂わせたら喜んでついてくるかもしれないと思った?
北原さんの会社でのリーダーシップや仕事のやり方は、今も昔も尊敬している。
本社でもきっと彼の仕事に対する評価は高いんだろう。
だけど私は、彼が時折見せる狡さだけは評価できない。



