「それでは、役職者会議はこれで終わります。お疲れ様でした」
ぼんやりしているうちにいつの間にか北原さんの話は終わっていて、周りの人たちがバラバラと立ち上がる。
「お疲れ様です」
他の役職者たちが部署は戻る前に掛け合う声を聞きながら、下を向いて息を吐く。
気付くと会議室に残っているのはいつのまにか私ひとりだけになっていた。
周りを見回すと、誰かが置き忘れた資料が残っていたり、椅子の配置が乱れていたりする。
この調子だとこのあとも仕事に集中できそうにないし、気分を変えるために会議室を片付けてからデスクに戻ろう。
まず置き忘れや余った資料を一カ所に纏めて、それから目に付いた椅子から順番に元の配置に整えていく。
そうやって体を動かして作業をしていると、胸に溜まった重たくて苦い感情をしばらくの間忘れられた。
会議室が元どおり綺麗に片付いたのを確認して、ほんの少しさっぱりした気持ちになる。
これで、少しは仕事もはかどるだろう。



