「違いますよー。ねぇ、広沢くん」

笑いながら否定する秦野さんの声は楽しそうで、聞いていて胸がモヤモヤとした。

同意を求められた広沢くんは、肯定も否定もしない。

そのことが、さらに私をモヤっとさせた。

どうして、私がこんな複雑な気持ちにならないといけないんだろう。

広沢くんと秦野さんが仲良かろうが、付き合っていようが私にはなんの関係もないのに。

頭ではそう考えているのに、胸の中には重たくて苦い泥のような感情がゆっくりと降り積もっていく。


「ほんとうですか?なんか、怪しい」

業務時間中だと言うのに、秦野さんも菅野さんもなんだか盛り上がっている。

彼女たちの会話が盛り上がるほどに、私の気持ちは少しずつ沈んでいった。

このままここにいても、彼女たちの会話に加われるわけでもない。

仮に加われたとしても、どんな顔でその場に立っていればいいのかわからない。

重苦しい気持ちを抱えたまま、私はその場から静かにそっと逃げ去った。


思えば、今日はそのときからずっと仕事に集中できていない。