「あれ。すみません、邪魔しちゃったかな……」

すぐに足を止めた菅野さんが気まずそうにつぶやくのが聞こえて、ギクリとした。


「あ、菅野さん!と、碓氷さん……?すみません、私たちこそお邪魔でしたね」

秦野さんが、菅野さんと背を向けたままの私に気付く。


「いえ。私のほうこそ、邪魔しちゃいましたよね。ふたりでデートの相談ですか?」

菅野さんが、そう言って茶化すように笑った。


「そんなんじゃないですよ。ご飯食べに行こうって話をしてただけなんで」

「え、そういうのってデートって言うんじゃないですか?」

「えー、違いますよ」

冗談まじりに話す菅野さんの言葉を、秦野さんが笑いながら否定する。

背を向けていて表情は見えないけれど、秦野さんの声は明るい。

広沢くんとの仲を菅野さんに茶化されるのを、少し喜んでいるみたいだった。


「秦野さんと広沢くんて、いつも仲良さそうですよね。噂通り付き合ってるんですか?」

秦野さんの反応に合わせて、菅野さんがさらにふたりのことを揶揄う。