きっと、デスクに戻るか戻らないかというところで泣いてしまうんだろうな。
そう思いながらも、私は彼女の前で厳しい上司としての態度は崩さなかった。
用件を伝え終えた私がパソコンに視線を移すと、彼女が潤んだ瞳でしばらく私を見てから自分のデスクへと戻っていく。
カタンと椅子の鳴る音が聞こえたのを合図に。さりげなくそっと彼女に視線を向ける。
思ったとおり、資料をデスクに置いた彼女は、両肘をついて横顔を隠すようにしながら俯いていた。
ときどき小さく揺れる肩を見れば、誰の目にも彼女が泣いているのがわかる。
隣の席に座っている、彼女よりひとつかふたつ上の男性社員が、泣いている彼女に慰めの言葉をかけながら、私を非難するような目で見てくる。
だけど、いつのまにかそういうことに慣れすぎてしまっている私にとって、彼が向けてくる非難の眼差しなど痛くも痒くもなかった。