「今回視察に来て、本社に来て仕事をしてもらいたい若手社員も何名かいました。今後、そういう将来性のある若手の育成のために本社での研修を行ったり、本人の希望を確認してではありますが人事異動なども検討するかもしれません」


ぼんやりとしていたのに、北原さんのそんな言葉がとてもクリアに耳に飛び込んでくる。

そういえば今日北原さんが企画部を視察に来ていたとき、よく広沢くんに話しかけたり彼の受け持つ仕事についていろいろ質問していた。

広沢くんはうちの支店では贔屓目なしに有能な若手社員だと思う。

今回北原さんの目に留まって、本社での研修や異動対象に選ばれているんだろうか。


自分の部下が仕事で評価されるのは嬉しい。

だけど同時に、重たい泥のような感情が胸にゆっくりと沈んでいくような気がした。

もしそれに味があるなら、苦くてとても嫌な感じだ。


この苦くて嫌な感じを、今朝も感じた。