「そんな誤解されたら困るようなこと、こんなところで大きな声で言わないで」
小声で制したら、広沢くんが皮肉っぽく笑った。
「誰に誤解されたら困るんですか?北原さん?」
「どうしてそうなるのよ」
「飲み会の間、北原さんは何度も碓氷さんのこと見てましたよ」
「気のせいでしょ?」
「気のせいじゃないですよ」
「仮にそうだとしたら、今日の飲み会の費用を払うために、私がいつ会計をしに行くか気にしてたのよ。実際に、レジで精算し終わったあとに本人にそう言われたから」
「へぇ」
あまり納得のいかない表情で私を見上げて、広沢くんが不満げな相槌を打つ。
「広沢くん、今日はちょっとおかしいんじゃない?」
北原さんが来てから、広沢くんの私に対する態度はおかしい。
こんなふうに、事あるごとに突っかかられる意味がわからない。
私と広沢くんは上司と部下だし、北原さんと私だって今はもうただの上司と部下なのに。



