その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




ざわざわと騒がしい中で全員から集金し、残すは広沢くんだけになる。

そのことに気付いて顔を上げると、広沢くんはまだ椅子に腰掛けたまま気怠そうにスマホを弄っていた。

いつもなら、こういうことはさっと済ませてしまうタイプなのに。

最後まで何もしないでいるなんて珍しい。


「碓氷、集金終わったらもう解散にしていいか?」

「はい、大丈夫です」

企画部長が解散の号令をかけて、参加者がぞろぞろ席を立つなか、私は未だに椅子から動かない広沢くんの元に向かった。


「広沢くん」

呼びかけると、彼が無言で視線だけを私に向ける。

無表情な彼の、私を見る目がいつもよりも冷たく感じられて少し怖かった。


「集金していい?あと、広沢くんだけなんだけど」

「あぁ」

面倒臭そうにつぶやくと、広沢くんが財布から集金額ちょうどを無言で私に突き付けてきた。


「ありがとう」

お金を受け取ってテーブルを離れようと広沢くんに背を向けたけれど、彼はまだ椅子に座ったまま動かない。

他の同僚たちが店を出て行くなか、立ち上がろうとしない広沢くんが気になって私も店から出られなかった。