その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「そちらのミスだったのに、よくそんな提案がしてこれるな」

「でも……坂上さんも、最終的にお見せしたものを気に入ってくださってましたよね?」

「それは、ミスがなければの話だ。こっちは上層部から、そちらに全額返金させて、新しく広告を作り直してくれるところを探すように言われてる」

坂上さんの言葉に、広沢くんが唇を噛む。

坂上さんの言う通り、ミスがなければ今回彼が作った広告はかなり良いものだった。

広沢くんにとっても、満足のいくものだったのだろう。

私はしばらく彼を見つめると、坂上さんに向き直った。


「私からもお願い致します。もしもう一度チャンスをいただけるなら、御社か頼んでいただいた部数よりも数を増やして納品させていただきます」

この仕事の依頼を受けたとき、本来はもうちょっと部数が欲しいけれど、予算の関係で数を抑えているという話を広沢くんから聞いていた。