その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「二人目は、男の子?女の子?」

「男の子です」

「それは賑やかになるね」

「そうですね」

そんなやりとりをしたあと、北原さんが少しの間黙り込む。

それから躊躇いがちに口を開いたかと思うと、ものすごく遠慮がちに私に訊ねてきた。


「それで、礼子は?」

「何がですか?」

問いかけの意味が本気でわからなくて首を傾げると、北原さんが口元に手をあてながらボソリと言った。


「その、結婚……とか」

「…………?あぁ」

そこでようやく、彼が私に言わんとしていることが理解できた。

結婚も視野にいれて付き合っていたにも関わらず自己都合で切り捨てた女の妹に第二子が生まれたことがわかって、少し気まずい思いでもあるんだろう。


「結婚の予定はないです」

もう北原さんに対して何も感じることはないと思っていたのに、彼の余計な気遣いに少し苛ついた。

敢えて笑顔で、きっぱりそう返したら、北原さんの表情が曇る。