その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「手伝ってもらったお礼に、何か奢るよ。明日の夜、空いてる?一緒にご飯行かない?」

歩いてくるふたりを避けるように廊下の端に移動したとき、秦野さんが段ボール箱を持つ広沢くんの腕にさり気なくタッチしながらそう誘いかけるのが聞こえてきた。

盗み聞きしたかったわけではないけれど、聞こえてきてしまった会話にピクッと耳が反応してしまう。

思わずふたりのほうを振り向いてしまうと、すれ違いざまに私のほうを見た広沢くんと数秒目が合った。


秦野さんとの会話を聞いてしまったことは、確実に広沢くんにバレているだろう。

気まずいな……

そう思いながらも、自分から先には目をそらせなかった。


「ねぇ、聞いてる?明日の夜、予定どうかな?」

自分の誘いになかなか答えない広沢くんのスーツの袖を、秦野さんが甘えるように引っ張るのが見える。

そうされて初めて、広沢くんの視線が私からされて秦野さんのほうに向けられた。