その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




坂上さんが、手にしていた広告の束を応接テーブルの上に乱暴に放り投げた。

視界の隅に見えた広告は、確かに私が最終チェックを出したものとは異なっている。


「申し訳ございません。そちらは全て、私共がお引き取り致します」

「あぁ、ぜひそうしてもらいたい。この処分に大事な時間を割きたくはないんでね」

「はい」

「それで?謝罪に来ただけで、何か別の提案は?今回の広告に支払った分は全額返してもらえるの?」


「あの……」

坂上さんの言葉に私が数秒考え込んでいると、隣でずっと黙って頭を下げていた広沢くんが顔を上げた。

突然口を開いた広沢くんのことを、坂上さんが怪訝そうに睨む。


「あの、よろしければもう一度チャンスをいただけないでしょうか。本来お届けするべきであったものを、今度は必ず用意させていただきますので……」