その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「あ、そうだ。碓氷」

一礼して踵を返そうとすると、企画部長が思いついたように呼び止めてきた。


「その会議に出席したメンバーで、今日の夜に北原さんの歓迎を兼ねた親睦会をやりたいと思ってるから、どこか店取っといてくれ」

「今日、ですか?」

「急だが、明日の夜だと北原さんの予定が合わない」

「何時から何人ですか?」

「20人くらいかな。時間は19時くらいで頼む」

「え……」

そんなに大人数、当日に?

一瞬思考停止させる私を置いて、企画部長はさっさと歩き去ってしまう。

引き止めて店の予約は難しいかもしれないことを伝えたところで、企画部長は納得しないだろう。

経験上それがわかっているから、その背中を見送りながらため息を吐く。

なんとか尽力を尽くすしかない。


頭の中で今日のスケジュールをもう一度ざっと組み立て直すと、厄介な仕事から先に片付けることにした。