「な、何言ってるのよ。もう終わったことだし、北原さんは副社長の娘さんと……」
「俺が聞きたいのは、そういうこと抜きにしてもまだ好きなのかってことです」
私の言葉を遮る広沢くんの声は、さっきとは違って大きく強かった。
好きなのか……
そう問われたら、正直もうよくわからない。
当時は彼のことが好きだった。
でも今は……?
「もう関係ないから」
そう切り捨てた私に、広沢くんがまた問いかけてくる。
「もう好きじゃないとは言わないんですね?」
「え?」
「碓氷さん。今から会いに行っていいですか?」
耳に届く広沢くんの、喉の奥から絞り出したみたいな声はひどく苦しそうだった。
彼が今どんな表情を浮かべているのかを想像したら、考えがうまく纏まらず、回答も追いつかない。
「広沢くん……」
「すみません。嘘です。碓氷さんのこと、ちょっと動揺させたかっただけです」
結局私が何も答えられずにいるうちに、広沢くんがははっと乾いた声で笑った。



