「碓氷さん。すみません。自分の仕事なのに、最後まで責任持たなかった俺のミスです。秦野は別に……」

広沢くんが庇うと、秦野さんは少し赤くなった目で上目遣いに彼を見た。

ふたりが纏う、どこか親密そうな空気にため息が溢れる。


「お互いに庇い合うのは結構だけど、それで今回のミスが消えるわけじゃないのよ」

「すみません……」

何とか捻り出したような小さな声を出す彼に、毅然とした態度で微笑んで見せる。


「とにかく、謝罪に行きましょう。広沢くんも急いで用意して」

「はい」

私の指示に、広沢くんが表情を引き締めて頷いた。

そんな彼を涙の溜まった目で心配そうに見つめる秦野さんは、この前彼女の同僚の男の子が言ってたように、庇護欲を掻き立てられるような可愛さがある。


「秦野さんも、今は仕事に戻って」

なるべくきつい言い方にならないように、秦野さんに声をかける。

それから、まだ準備をしている広沢くんより一足先にデスクから離れた。