その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



秦野さんは自分の認識違いだと言っていたけれど、よく話を聞いてみると退社した社員のほうの引き継ぎ資料にミスがあったようで、彼女だけに非があったわけではない。

普段はトラブルやミスがあると、いつも泣きそうになりながら私やほかの上司に対応を委ねてしまっている秦野さんだったけれど、そのときのミスだけは私のアドバイスを聞いてひとりで最後まで対処し、きちんと取引先との関係を修復させていた。

そんな彼女のことを見直していたのだけれど……

やはり、少し詰めが甘かったらしい。


「今回は絶対にミスのないように期限までにお届けしなければいけないのに……」

そこからはうまく言葉にならないみたいで、今にも零れ落ちそうな涙で秦野さんの大きな目はうるうるとしていた。


「それで、取引先には事情はきちんと説明したの?」

この様子では謝罪はまだなのだろうと予想できた。

それでも一応確認してみたら、案の定、秦野さんは無言でフルフルと首を左右に動かした。