オフィスに戻った私は、まず最初に企画部長のところへ向かった。
「すみません。さっき申請書を提出した有給のことで……」
事情を話すと、企画部長はすぐに理解を示してくれた。
「そういうことなら、すぐ行ってあげたほうがいい。俺はこれから他部署との会議だけど、何かあればいつでも連絡してくれたらいいから」
「ありがとうございます」
「妹さんの赤ちゃんが無事に産まれてくるよう祈ってるよ」
会議の時間を気にしながらも、気遣いの言葉をかけてくれた企画部長をこのときばかりは見直した。
企画部長との話が終わると、早足でデスクに戻って身の回りを片付ける。
「ごめんなさい、今日私はこれで……」
カバンを手に持って立ち上がりながら近くのデスクの部下に声をかけようとしたとき、少し離れたデスクに座っている秦野さんが、電話の受話器を握りしめて顔面蒼白になっているのに気が付いた。
何かトラブルでもあった……?



