仕事とは全く無関係な資料を押し付けられた広沢くんが一瞬きょとんとする。
けれどすぐに何かに気が付いて、私を見てニヤリとした。
「うっかりしてました。どうもありがとうございます」
わざとらしくにこりと微笑んだ広沢くんが、資料と引き換えに私にスマホを手渡してくる。
「すぐ電話してくださいね」
ボソリとささやく広沢くんの言葉に、素直に小さく頷くとそのままオフィスの外に出た。
人気のない場所まで歩いて行ってスマホを見ると、誠司くんからメッセージアプリに連絡がきていた。
嫌な胸騒ぎを押さえながら、メッセージを開く。
それを読んだ瞬間顔から血の気がひいて、誠司くんからの着信をすぐにとらなかったことをひどく後悔した。
美弥子のお腹の赤ちゃんの様子が少し危険な状態になり、午後から予定より早まった出産になるらしい。
誠司くんも焦って文字を打ったのか、メッセージにはいくつも誤字が散らばっていた。
誠司くんは今病院に向かっているところだという。



