そのまま留守番電話にメッセージが吹き込まれている様子もない。
本当に緊急だったら、留守電にメッセージが入るだろう。
勝手な思い込みでそう決めつけて、着信の切れたスマホをデスクに置いた。
「ごめんなさい。話の続きを……」
視線を上げながら口を開くと、広沢くんが怖い目をして私のことを見ていた。
「電話、今すぐ掛け直してきてください」
広沢くんが怒ったような低い声を出す。
「大丈夫。話が終わったら掛け直すから」
広沢くんの忠告を無視して仕事の話を続けようとすると、彼が私のデスクを手のひらでドンと叩いた。
突然のことに驚いて、大きく目を見開く。
近くのデスクに座っている同僚の何人かも、驚いた様子でこっちにチラチラと視線を向けていた。
「広沢くん……?」
「碓氷さん、本当に今の電話より俺との仕事の話のほうが大事なんですか?」
広沢くんが私を怖い目で見つめながら、周囲には聞こえないくらいの低い声で問いかけてくる。
彼の言葉に胸が騒ついた。
どちらが本当に大事かは、頭の中でちゃんとわかっている。
でも……



