それなのに……

印刷会社を通して届けられた広告に、どうやらミスがあった。

広告に記載された商品名の一部に誤字が含まれていたのだそうだ。

取引先にとっては、特に開発に力を入れて発売に踏み切ったという新商品。

その広告にミスがあったことにかなりのご立腹らしい。


「どうしてそんなことになったの?最終のものを、先方も確認していたはずよね」

「はい、そうなんですけど。印刷会社にデータを送るときに、編集過程で保存して置いたままにしていた別のデータを送ってしまっていたみたいで……」

「別のデータ?ちゃんと確認しなかったの?」

広沢くんにしては珍しいミスだ。

眉を寄せながら訊ねたら、彼が言いにくそうに私から視線をそらす。


「すみません。そのとき仕事が立て込んでいて、データの送信だけなら大丈夫だろうと別の人に作業を頼みました」

「そう……」