さっきまでよりもテンションが下がっているように見える広沢くんの心のうちがなんとなく想像できてしまって、思わず吹き出しそうになった。
なぜだか私に少し好意を寄せてくれている広沢くんは、私が過去にこのレストランを訪れた理由を想像して、そのことを気に病んでくれているらしい。
私から視線を外して少し頭を垂れている広沢くんの姿がなんだか幼く見える。
その様子を見ていたら、昼間に植物園でいろいろとやられた悪ふざけの仕返しをしてやろうかな、というちょっとした悪戯心が湧いてきた。
「そうね。そういう目的で利用したことも過去にあったかもしれない」
テーブルに頬杖をついて、悪戯っぽく笑いながらちらりと周りのカップルに視線を向ける。
「へぇ、そうですか」
私のその言葉を聞いた広沢くんが、一瞬ぱっと顔を上げて、それから無表情で顔をそらした。
「出てきた料理を食べてみたらわかると思うけど、本当に美味しいからおすすめなの。お店の雰囲気もいいし、特別な日のディナーには最適でしょ」
「そうですね」
終始機嫌が良さそうだった植物園とは全く違う広沢くんの反応が可笑しくて、もう少し意地悪をしてみたくなる。



