小さな声で不平をこぼしながら、広沢くんに背を向けるようにしてハンモックから滑り降りる。
服を整えてから振り向くと、広沢くんは私が下りた反動で揺れているハンモックの上でまだ寝そべっていた。
よく見ると、なんだか楽しそうにひとりでクスクスと笑っている。
何がそんな楽しいんだろう。
呆れ顔で見つめていたら、広沢くんがようやくゆっくりと上体を起こした。
「別にどんなふうに思われてたっていいじゃないですか。今日の名目はデートなんだし」
「違うわよ。デートじゃなくて『お礼』だから」
「でもれーこさん、『バカなカップルだと思われる』って言ったじゃないですか。それって、少しはデートだって意識してくれてるからでしょ?」
悪戯な笑みを浮かべている広沢くんのその問いかけに、私は数秒無言になった。
どういう経緯で私の言葉がそんな前向きな解釈になったのか。
広沢くんの思考回路が謎すぎる。