その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「れーこさん、飛行機」

まるで子どもみたいな声を上げて空を指差す広沢くん。

彼がそうして動いたことで、ふたりで乗っているハンモックが軽く揺れた。

キュッと布の軋む音がして、私と広沢くんの体はそれぞれお互いのほうにハンモックの上で滑った。

もともとふたりでは狭い幅のハンモックの上で左半身が広沢くんに密着する。

焦って離れようとすると、余計に滑ってしまって。

一度冷静さを取り戻すために息を吐いた。

今度は落ち着いて体を起こそうと手をつくと、偶然、来園者のグループがハンモックのそばの遊歩道を通りかかった。

私たちより若い、もしかしたら学生かもしれないそのグループの男女数名が私たちのほうをちらっと見てきた。

勝手な被害妄想かもしれないけど、彼らに笑われたような気がして恥ずかしくなった。


「もう、私は降りるから。ふたりでこんな狭いところに寝転がったりして。絶対さっきの子達に、いい年してバカなカップルだと思われてるわよ」