その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「休憩するの?」

「森の中のハンモックとか、気持ちいいですね。こんなのに寝そべるの、始めてかも」

ハンモックに寝そべって手足を思いきり伸ばしながら、それを左右に大きく揺すっている広沢くんの表情は子どもみたいだ。

少し距離をとって立ちながらその様子を眺めていると、広沢くんが私に向かって手招きをする。


「れーこさんも寝転んでみたら?気持ちいいですよ」

「私は遠慮しとく」

苦笑いして首を横に振ると、広沢くんがひょいっと上半身を起こした。


「下手に遠慮してたら、人生損しますよ。れーこさん」

広沢くんが、私を見上げて悪戯っぽく笑う。


「そんなこと……」

言い返そうとしたら、無意識に前で組んでいた腕を広沢くんにつかまれた。

それほど強い力で引っ張られたわけでもないのに、その行為が不意打ちすぎて、自己防衛でもするみたいに組んでいた腕が解けてしまう。

そのまま前に引っ張られて、抵抗する間も無く私の体は広沢くんの隣でハンモックに転がっていた。