その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「あ。れーこさんの、いい匂い。これって、どういう目的で使うんですか?」

私が作ったサシェの香りを嗅ぎながら、広沢くんが訊ねてくる。


「うーん。インテリア的に玄関とか部屋の好きな場所に置いたりとか。あとは、タオルが入ってる棚とかに一緒に入れてみたりしてもいいんじゃない?」

「あー、そしたら香りが移るってことですね」

「小さいものだから、そんなに長持ちはしないかもしれないけど」

「ふーん」

曖昧な返事をしながら私のサシェを見つめていた広沢くんが、突然私の手の上にサシェを返してくる。

けれどよくみると、私が作ったものとは巾着とその口を結んだリボンの色が違っていた。


「返すほう、間違ってるわよ」

広沢くんが私の手にのせてきたのは、彼が私の隣で気まぐれに作っていたものだ。


「間違ってないですよ」

返そうとすると、広沢くんが私の作ったサシェを緩く結んだ手の中に包み込んでニヤリと笑った。