「あれ?広沢くんも見に来てくれたの?」

「そうだよ。今日はちょうど、乃々香ちゃんのおばさんと一緒にお仕事してたんだ」

広沢くんが、首を傾げた乃々香と視線が合うように姿勢を低くした。

満面の笑顔の広沢くんが「おばさん」という単語をやや強調したような気がする。

少しムッとしながら、乃々香に愛想を振り撒く広沢くんを見下ろす。


「乃々香、写真……あ、お義姉さん」

そのとき、ミラーレス一眼を首から提げた義弟の誠司くんが乃々香の後ろから駆けてきた。

乃々香と一緒にいる私に気付いた誠司くんが軽く会釈してくる。


「お仕事があったのに、乃々香がわがまま言ってすみません。来てもらってありがとうございます」

「全然わがままじゃないわよ。私が見たくて来ただけだから」

「乃々香、お義姉さんに来てもらうの楽しみにしてたので、本当にありがとうございます。向こうの保護者席にシート敷いてるんでよかったら……」

私にそう話しながら、誠司くんが乃々香の前で姿勢を低くしている広沢くんに不審げな視線を向ける。