乃々香の小学校はイベント会場からそこまで離れてはいないけれと、広沢くんの家の方向とは全然違う。
近場の駅とか適当な場所で降ろしてもらえたらいいから、と何度も言ったけれど、広沢くんは私の主張を全然聞き入れてくれなかった。
私が何か言うと、広沢くんがなんだかんだともっともらしく反論をしてくる。
結局、私は乃々香の小学校まで車で送り届けられてしまい……
なぜか広沢くんも、私と一緒に小学校の運動場へと着いてきた。
「どうして広沢くんが一緒に来るのよ」
「だって、俺が走る特訓したんだし。コーチとしてはその成果をちゃんと見届けたいじゃないですか」
広沢くんが私を見てニヤリと笑う。
「その必要ある?」
「礼ちゃーん!」
呆れ顔を浮かべていると、ちょうど競技を終えて応援席に戻ろうとしていた乃々香が手を振りながら駆け寄ってきた。
「よかった!お仕事、早く終わったんだね」
私に弾けんばかりの笑顔を向けた乃々香が、少し離れて歩いていた広沢くんに気付いて瞬きをする。



