口にしてしまったあとで、ちょっと冷たい言い方をし過ぎたかと気になった。
せっかく休日を潰して助けてもらったのに、薄情だったかも。
不満げな表情を浮かべているであろう広沢くんの顔色をそっと窺う。
けれど、彼の表情は私が想像していたものとは違っていた。
「急ぐなら、なおさらそっちじゃないですよ」
広沢くんが悪戯っぽくにっと笑う。
それから私の手をつかむと、駅とは真逆の方向に引っ張った。
「ちょっと、どこ行くの?」
引っ張られるままに連れて行かれたのは、広沢くんの車が停めてある駐車場だった。
助手席側に私を導いてから、広沢くんがそのドアを開ける。
「どうぞ」
「どうぞ、って……」
「ここでじゃぁお疲れ様、なんて。初めからそんなつもりないですよ。乃々香ちゃんの小学校まで送ります」
「え?」
「乗ってください」
ぽかんとする私の背を、広沢くんが急かすように押してくる。
「え、でも……」
「早くしないと、午前の部終わっちゃいますよ?」
もたついていると、またもや強引に助手席に押し込まれた。
「ちょっと……」
私の反応なんてお構いなしで、広沢くんが外からドアを閉める。
窓をコツリと叩くと、ガラス越しに目が合った広沢くんがしたり顔で笑っていた。



