ふざけているのかなんなのか知らないけれど、またそんなことを言って……

楽しそうに運転している広沢くんの横顔を見つめ、眉を顰める。


「タクシーで行った場合は領収書をもらえばタクシー代が清算できるんだけど。いちおううちの会社は車での営業とか職場への車通勤は社内規定で認められてないから、今日のガソリン代は出ないかもしれないわよ?」


サービス出勤しているのに楽しそうな広沢くんに、一言釘を刺す。


「そんなのいいですよ。仮に出たって微々たるもんでしょ?俺が勝手にやったことなんで」

「でも……」

私より年下の同僚なんて、与えられた量以上の仕事の負荷がかかると嫌がる子がほとんどなのに。

まぁ、助けてもらったし、私からなんとか交渉してみよう。

そんなことを考えていると、車がゆっくりと止まった。

赤信号に引っかかったらしい。


「広沢くん、ガソリン代は週明けに私から――……」
「どうしても碓氷さんが気になるって言うなら、交通費の代わりに俺とデートしません?」

頭で考えていたことを口にしようとしたとき、広沢くんが横から私を覗き込みながらにこりと笑いかけてきた。