台車にパンフレットの入った段ボールをのせると、私たちはエレベーターで地下に降りた。
土曜日なのもあって地下駐車場は空いていた。
「あれです」
広沢くんがエレベーターを降りてすぐのところに停めてあった黒のSUVを指差して、それに向かって台車を押していく。
「碓氷さん、乗っててくださいね」
積み込みを手伝おうとトランクほうに回って待っていたら、広沢くんに笑顔でそう言われた。
私が下手に手を出すより彼がひとりで積み込んだほうが早いのかもしれないけど。
乗っておけといわけても、言葉の通りに人様の車に勝手に乗り込むの気が引ける。
後部座席のドアの前で落ち着かない気持ちで立っていたら、荷物を積み終えた広沢くんが私を見て笑った。
「乗っててくださいって言ったのに」
そう言いながら運転席のドアを開けて乗り込もうとする広沢くんの動向を伺いながら、運転席側の後部座席のドアを開く。



