その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



その様子を少し離れて見ていたら、広沢くんが私の視線に気が付いた。

ついでにまだ手をつけていないおにぎりやパンにも気付いたらしく、「早く食べろ」とばかりに目で圧力をかけてくる。

そんな視線を避けながらそろそろとおにぎりを開けていたら、秋元くんが広沢くんに話しかけ始めた。


「それにしても広沢さん、碓氷さんがお昼食べてないとかよくわかりましたね」

「それ、私も思った」

「ですよね!そういえば結構前に、碓氷さんが広沢さんのこと気に入ってて優遇してるって噂を聞いたことあるんですけど。広沢さんと碓氷さんて、何かあるんですか?」

明らかに興味本位な秋元くんの問いかけを離れて聞きながら、微妙な気持ちでおにぎりをかじる。

私が広沢くんを優遇しててどうこうという話は、随分前に私自身も耳にしてしまったことがある。

広沢くんが同僚の中でも仕事ができるほうだから傍目にそう感じられてしまうだけで、実際には私が個人的な感情で彼を特別優遇した仕事なんてない。

それなのに根拠のない噂をされるのは、広沢くんにとってマイナスだから申し訳ないと思う。