その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「あ、ちょっと。碓氷さん」

呼び止めてくる広沢くんの声は聞こえないふりをして、パンフレットにチラシを挟み込む作業に戻る。

椅子に座って作業を再開していると、不意に私の手元に黒い影が落ちた。

前方に人の気配を感じて顔を上げたとき、怒ったように唇を引き結んだ広沢くんがコンビニ袋を私の目の前なドンッと乱暴に置いた。

それから、無言でおにぎり2つと菓子パンを音をたてながら乱暴に並べていく。


「選ばないなら、勝手に置かせてもらうので。どうぞ」

私は広沢くんが不機嫌な理由も、その行動の意味もわからずに、ぽかんと彼を見上げた。


「先輩だからとか、そういう理由じゃないですよ?」

「何が……?」

「碓氷さん、今日昼メシ食ってないですよね?」

「…………」


広沢くんに指摘されて驚いた。

ちょうど休憩を取ろうとしたときに、秋元くんにパンフレットのことで声をかけられて。

それからトラブルが起きてしまったから、彼の言う通り、昼休みを取りそびれている。

だけど、そんなこと気付かれてたなんて。