その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―






就業時間が過ぎて、薄暗くなった社内に印刷機の稼働音が騒々しく響き渡る。


「碓氷さん。印刷枚数、あと残り半分です」

刷り上がったチラシを集めに行った秋元くんが、私を振り返って声をかけてくれる。


「わかった。ありがとう」

「碓氷さん。これ、100部ずつで纏めて段ボールに入れますね」

「ありがとう。助かる」

菅野さんにそう答えながら、休めることなく手は動かす。

15時にパンフレットを取りに来た取引先に完成品を渡せたのは、全部で300部。

広沢くん、秋元くん、菅野さんに手伝ってもらって頑張ったけれど、制限時間内ではそれが限界だった。

パンフレット作成だけやっていては通常業務が回らないので、取引先が帰ったあとはみんなにはそれぞれ自分の仕事の方を優先させてもらった。

その間に、私が通常の仕事をこなしながら折込チラシの印刷とパンフレットの挟み込みを行なって。

それでもまだまだ完成しなかったので、就業時間を過ぎたあとも秋元くんと菅野さんが残って手伝ってくれている。

適当に帰るように何度も伝えているのだけど、ふたりとも真面目なのでなかなか帰ろうとしない。

ふたりには申し訳ないけど、私ひとりではかなり大変な作業だったのでありがたい。


広沢くんは16時頃から取引先に出かける予定があったから、パンフレットが完成してないことを気にしながら出て行った。