その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




「仰るとおりです。全ては私の監督責任です。ですから、この解決策としてこのようなことを考えています」

真っ直ぐに顔を上げた私を、企画部長が興味ありげに見下ろした。


「用意できていない折込チラシ3000部これから社内で印刷します。先方がパンフレットを受け取りに来られるまでになるべく多くの冊数を完成させるように努力しますが、社内の印刷機を独占するわけにはいきません。そのため、受け取りに来られるまでに3000部全て用意することは不可能ですが、間に合わなかった分は必ず今日中に全て完成させて明日のイベントが始まる10時までに会場まで私が持参します。この内容で先方にご理解いただけるかどうか、部長からお話していただけませんか?」

「わかった。確認しよう」

私の話を聞いた企画部長は、冷静に頷くとすぐに電話をかけてくれた。

しばらくして電話を終えた部長が顔を上げる。


「碓氷。お前の言うとおりで問題ないそうだ。次こそは不備のないように」

「はい。わかりました」

私は強く頷くと、隣で不安そうに立っている菅野さんの背を押した。


「ありがとう。大丈夫」

そっと声をかけると、菅野さんが泣きそうな顔で小さく頷いた。