その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「用意できてないってどういうことだ?必ず間に合わせるように、とよく頼んだはずだろ」

部署内に企画部長の低い声が響いて、ざわついていた社内がシンとなる。

さっきまではひっきりなしに鳴っていた電話のコール音もなぜかタイミングよく途絶えていて。

部署内のほとんどの同僚の視線が、企画部長のデスクの前に佇む私に注がれていた。


「あと数時間でパンフレットを受け取りに来るというのに。どう責任とるつもりなんだ?」

「申し訳ありません」

一応、打開策は考えてあるけれど。

とりあえず、企画部長の怒りが治るまではと大人しく堪える。

何度か単調な謝罪を繰り返していると、青い顔をした菅野さんが立たされている私の隣にやってきた。



「部長、申し訳ありません。碓氷さんではなくて、これは私のミスなんです」

私の横で深々と頭を下げる菅野さんを、企画部長が冷たく一暼する。


「部下に庇ってもらうとは情けないな、碓氷」

低く響いた企画部長の声に、菅野さんが青ざめて肩を震わせる。

そんな彼女を優しく横へ押しやると、私が企画部長の前に出た。