その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「大丈夫ですか?」

広沢くんが私の内面でも探るようにじっと顔を見つめる。

心配そうに揺れる瞳の奥を見つめて、私は気丈に笑い返した。


「大丈夫。何とかなるから。広沢くんも早く仕事に戻って」

そう促したけれど、広沢くんはなかなか私のデスクの側から離れない。


「広沢くん、戻って」

もう一度言っても動かない彼に、思わずため息がこぼれる。


「もし何か手伝ってほしいことがあれば声をかけるから」

苦笑いを浮かべてそう言うと、広沢くんがあまり納得のいかない顔で、ようやく私のデスクから離れていった。


さて。どうしよう。

先方がパンフレットを受け取りに来るのがあと2時間半後。

しばらくパンフレットの入った段ボールを見つめたあと、私は部署の奥にある企画部長のデスクへと向かった。