その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「乱丁がないか、念のため何部か確認してみてくれる?」

「わかりました」

秋元くんが運んできてくれた3つの段ボールを全て開封して、集まってきた3人に何部かずつパンフレットを手渡す。

しばらくして、ふとあることに気付いて手を止めた。


「秋元くん。届いたのって、この3箱だけ?」

「そうですけど……」

私の問いかけに、秋元くんが不安そうな顔をした。


「そう。おかしいわね……パンフレットに挟む折り込みのチラシも一緒に印刷の依頼をしてたはずなんだけど……」

それは秋元くんが作ってくれたもので、今回のイベントの次に行われるイベントの告知チラシだった。


「あ、そうですよね」

「既にパンフレットに挟まれてたりしないですか?」

みんなで何部か確認してみたけれど、そんな様子はない。


「届け忘れかもしれないわね。ちょっと、電話で確認してみる」

印刷会社に電話して、担当者に取り次いでもらう。


「え?依頼をもらってたのは、パンフレット3000部のみだったはずですけど」

折込チラシのことについて訊ねたら、担当者がすぐにそう返してきた。