その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―





「碓氷さん。パンフレットの完成品が届いたので、確認してください」

昼休みをとろうかと席を立ちかけたとき、重そうな段ボール箱を抱えた秋元くんが私に歩み寄ってきた。


「届いたのね」

秋元くんがデスクに置いてくれた段ボールを開封しながらほっとする。


「はい。あっちにあと2箱あるので、それも持ってきますね」

「どうもありがとう」

パンフレット案の作成、先方へのサンプル確認、印刷会社への依頼。

そこまでは予定通り順調だったのだけれど、昨日印刷会社から完成品の到着が予定した日よりも遅れると連絡があったから、内心焦っていた。

今日は先方がパンフレットを引き取りにくる、イベント前日の金曜日。

企画部長から、15時頃には来社されると聞いていたから、間に合って本当に良かった。


「あ、届いたんですね」

「間に合ってよかったです」

私と秋元くんの会話に気付いた広沢くんと菅野さんが、デスクの周りに集まってくる。

依頼を受けたパンフレットの枚数は3000部。

それが、100部ずつくらい帯で巻かれた纏められていた。