「碓氷さんたちは、このあと妹さんの病室に戻るんですか?」

「中庭でおやつでも食べさせて、少し散歩してから戻るつもり。ずっと病室にいると、乃々香は退屈しちゃうみたいだから」

「まぁ、そうですよね」

頷きながら乃々香に視線を向けた広沢くんが、不意に何か思いついたように「あっ」とつぶやいた。


「そういえば、こっから5分くらい歩いたところに公園ありましたよ」

「そうなんだ?」

そこで時間を潰すのもいいかな。

そんなことを思っていたら、広沢くんがまた乃々香の正面で向かい合うように屈んだ。


「乃々香ちゃん、お兄さんと一緒に公園で遊ぶ?」

広沢くんが営業用の爽やかな笑みを浮かべて乃々香に誘いかける。


「何言ってるの?そんなこと頼めるわけないじゃない」

「いいんですよ。俺はこのあと暇なんで。ていうか、碓氷さんは黙っててください。俺は乃々香ちゃんのことを誘ってるんで」

広沢くんが私をちらっと見やって、手のひらで追い払うような仕草をしてくる。