「そんなあっさり……」

私を見上げて何か言おうとしている広沢くんをジッと睨むと、彼が肩を竦めて口を噤んだ。


「うん、やっぱりそうだよね」

そんな私たちのやり取りを見ていた乃々香が、広沢くんと私を見比べて納得したように何度か頷く。


「だってこの人、礼ちゃんの前の彼氏と全然イメージ違うもん。前の彼氏は、大人な雰囲気のかっこいい人だったよね」

「あぁ、うーん。どうかな……」

乃々香の発言に思わず苦笑いする。

実は付き合っていたときに一度だけ、北原さんを妹や乃々香に会わせたことがあったのだ。

そのときは彼との将来的なことも考えていなくはなかったから、彼もきちんとした格好で家族に対応してくれた。

だから乃々香にそんなイメージを印象付けたのかもしれない。

まぁ実際、目の前の広沢くんと比べると、彼は随分と大人だった。

苦笑いのまま広沢くんに視線を落とすと、彼が落胆の表情を浮かべていた。


「さすが、碓氷さんの姪ですね。発言が全然可愛くないんですけど」

「仕方ないじゃない。子どもから見ても、私とあなたは上司と部下にしか見えないってことでしょ？」

肩を落としている広沢くんを見てクスッと笑うと、彼が恨めしげな目で私を見上げた。