「なんだ。姪っ子さんだったんですね」

病院の中庭に向かいながら乃々香との関係性を説明すると、広沢くんが安堵したように笑った。


「碓氷さんと手を繋いでる女の子を見たときは、息が止まりそうになりました」

そして笑いながら、本気だか冗談だからわからないことを言ってくる。


「ねぇ、礼ちゃん。この人、礼ちゃんの彼氏?」

それまでずっと私の隣で黙り込んでいた乃々香が、突然口を開いた。

ジトッと広沢くんを見上げてから、彼を指差して私を振り返る。


彼氏、って……。

「あぁ、この人は……」
「俺たち、そんなふうに見えた?」

乃々香の言葉に、広沢くんが嬉しそうにニヤリと笑う。


「乃々香ちゃん、だっけ?年、いくつ?」

「7歳だけど。ねぇ、本当に礼ちゃんの彼氏なの?」

屈んで姿勢を低くした広沢くんを乃々香が疑わしげに見つめる。


「うん、そう。俺は…………」
「うちの姪に変なこと吹き込まないで。乃々香、この人は私の会社の部下。一緒にお仕事してる人よ」

調子にのって乃々香に嘘の情報を吹き込もうとする広沢くんを、睨み下ろして制止する。